多発性嚢胞腎が腎動脈塞栓術TAEで劇的改善!! 肥大した腎臓のう疱が縮小(写真あり)

多発性のう胞腎とは、生れつき腎臓に膿疱が多発する遺伝病で、日本には約3~5万人の患者がいると想定されています。自然に治る事はありません。
今月は指定難病(67)とされた「多発性嚢胞腎」の末期に見られる、超肥大化した腎膿疱を、腎動脈塞栓術TAE カテーテルを使った手術で劇的改善へと導かれた例をご説明します。
「多発性嚢胞腎の末期で、お腹が出る」
当時43才の男性、10代後半に発症した「多発性嚢胞腎」末期の患者様が、自撮りで残していた貴重な写真資料です。
お腹が出ているのは食べ過ぎではなく、全て両腎の膿疱が巨大になり、消化器や肝臓や肺を圧迫している状態です。
この後、血液透析を導入し、ただちに腎動脈塞栓術(TAE)のカテーテル手術治療を経て改善へと向かう、およそ1年後の写真資料等をご紹介します。

手術前 | 手術の半年後 |
身長173cm 体重DW 68.5kg 座位へそ周 95cm 仰向へそ周 94cm |
身長174cm DW 64.5kg 座位へそ周 89cm 仰向へそ周 86cm |
■手術前の写真
徐々に肥大して来た両腎臓の嚢胞により、胃が圧迫され食事量が減り、顔の皮下脂肪が削ぎ落ちて栄養失調の所見も見られる。
へそから飛び出ているのは、のう胞に圧迫された小腸が行き場を無くし、臍ヘルニアとして、一部が飛び出てしまっている。
嚢胞の重みで、胸周りの筋肉が下方へ垂れ下がり、あばら骨を含む上半身の骨が露呈される状態ととれる。
■手術、半年後の写真
術後6ヶ月目の頃。
大きく変化した様子がわかる。上半身全体の肌つやが良くなり、皮下脂肪も若干増えて栄養状態も改善傾向と見られる。
■手術1年後の写真
術後およそ1年。
腰回りが引き締まり、筋肉量も増え、栄養状態も劇的に改善されている様子が伺える。
首や肩周りの太さも年齢相応の肌色、顔色の良さも伺える。
また、へそから飛び出していた小腸は、引っ込んで自然治癒した様子ととれる。
この時点では血液透析を週に3回、4時間で継続中。
体重ドライウエイトは、1年で約6kg減少。つまり2リットルのペットボトル3本分の膿疱液が体から抜けた計算となる。

手術前 | 手術の1年後 |
身長173cm 体重DW 68.5kg 座位へそ周 95cm 仰向へそ周 94cm |
身長174cm DW 62.5kg 座位へそ周 82cm 仰向へそ周 80cm |
■いったいどんな手術なの
腎動脈塞栓術(TAE)とは、1990年代、神奈川県川崎市の虎の門病院分院の医師、乳原善文先生によって確立された、「多発性嚢胞腎」希望の砦とも言われるカテーテル手術です。
腎臓内の動脈全てに医療用プラチナコイルを挿入し「嚢胞」周りへの血流量を減らして、嚢胞全体を窒息させ縮小が期待できる治療方法です。
当時は虎の門病院分院だけでしか治療出来ませんでしたが、令和の現在では、虎の門病院、東京女子医科大学、聖マリアンナ医科大学病院、名古屋大学医学部付属病院など、日本各地の大都市の医療施設で手術治療が可能です。
■手術費用を含む入院期間の総額費用
腎動脈塞栓術(TAE)じたいが、人工透析を導入した後に行う手術なので、心身障害者として申請および認定されていれば、費用は約3週間の入院期間の透析と手術代をふくめ、1万円程度です。
ただし食事代は負担しなければなりませんので、最初の外来の際に医師に気兼ねなく尋ねてみると良いでしょう。(個室を利用させる場合は有料です。)
■腎動脈塞栓術後の数日
腰周りの痛みと、8.5度前後の発熱が数日続くため、座薬や点滴で痛みや熱に対応します。当日の夜に痛みが強い場合はフェンタニル等を投与する事もあります。
退院までの入院期間は術後、平均、約10日前後です。

■(注)
この腎動脈塞栓術(TAE)は、手術後当日から、一切腎臓が尿を作れなくなるため、透析前の患者には行えません。
透析開始後で、まだ尿が出ていたとしても腎動脈塞栓術(TAE)を受けた日から尿は出なくなるので、主治医と良く相談された上で、治療を受けるのが望ましいです。
また、どんな手術や人の寿命にも総じて言える事ですが、この腎動脈塞栓術(腎TAE)も、術後の予後には個人差があります。